イーロン・マスク氏は5月19日、自動運転技術の普及時期と身体障害者向けの技術開発について言及した。マスク氏は「10年後には自動運転が広く普及する」との見方を示す一方で、現在進行形でまひ患者向けの技術開発に取り組んでいることを明かした。同氏の発言は、テクノロジーが社会にもたらす変革の幅広さを改めて浮き彫りにしている。
マスク氏の発言は、複数のプラットフォームを通じて伝えられたと報じられている。自動運転技術の普及タイムラインについて、同氏は「今後10年で自動運転が当たり前になるだろう」とみられるコメントを述べたとされている。これは同氏が率いるテスラの自動運転技術開発戦略と一致するもので、既に市場では「Full Self-Driving(FSD)」ベータ版の展開が進行中である。
同時に注視すべきは、マスク氏がまひ患者向け技術の開発に言及した点だ。これは同氏が共同創設したニューラリンク社の取り組みと関連しているとみられている。ニューラリンクは脳とコンピューターをインターフェースで結ぶ「ブレインコンピューターインターフェース(BCI)」技術を開発しており、脊椎損傷患者の運動機能回復を目標としている。マスク氏の発言からは、この技術が実用化に向けた重要な段階にあることが示唆されている。
自動運転とニューロテクノロジーという一見無関係に見える二つの領域への同時投資は、マスク氏のビジョンの本質を語っている。自動運転の普及は交通システムの最適化と人間の時間的解放をもたらし、BCI技術は身体機能の制限を克服することで人間の自由度を拡張する。両者は「人間の能力を増幅する」という共通の目的を持つと考えられている。
テスラの競合他社、例えばウェイモやクルーズなども自動運転開発を進めているが、マスク氏が同時にニューロテック領域で革新を目指すことで、テクノロジー企業としての差別化を図っているとみられる。また日本市場に限定すれば、高齢化社会における自動運転ニーズと身体障害者への技術応用の両面で、社会的インパクトは大きいと予想される。さらにニューラリンクのBCI技術が実現すれば、障害者だけでなく健常者も含めた人間拡張の時代へと突入することになり、産業全体の構造転換につながる可能性がある。
マスク氏の第一原理思考的なアプローチを適用するなら、この発言の本質は「人間の制約を取り除く」ことにあると考えられる。移動における制約を自動運転で、身体機能における制約をBCIで解放するという戦略は、火星移住という究極のビジョンへの道のりの一部として位置づけることもできるだろう。火星での生活環境は極めて厳しいため、自動化技術と人間の能力拡張なしには実現不可能だからだ。マスク氏のこれまでの発言から判断すると、眼前の社会課題解決と長期的な人類の多惑星化戦略を、実は一つの連続線上で捉えているのではないかと推察される。
テスラの自動運転技術とニューラリンクのBCI開発は、今後数年で実用化の正念場を迎えるとみられている。両技術がマスク氏の予想通りに進展すれば、2030年代には社会に大きな変化がもたらされることになるだろう。