スペースXが次々と打ち出す野心的なプロジェクトの背景には、イーロン・マスクの独特な思考方法がある。同社の躍進を支えてきたのが「第一原理思考」と呼ばれるアプローチだと、業界関係者の間で指摘されている。
第一原理思考とは、問題を最も基本的な要素にまで分解し、そこから論理的に組み立て直す思考法である。マスクはこの手法を宇宙開発の常識を覆す取り組みに適用してきたと報じられている。従来、ロケット業界では再利用不可能な使い捨て型が当たり前だったが、「そもそも飛行機は再利用するのになぜロケットは使い捨てなのか」という根本的な問いから、完全再利用可能なロケット開発という目標に辿り着いたとみられている。
スペースXの成功事例は枚挙にいとまがない。かつて「不可能」とされていた海上着陸の実現、スターシップの連続飛行試験の成功、そして火星への有人飛行を見据えた開発計画の加速など、業界の予想を次々と上回る成果を挙げてきた。これらの達成は、既存の業界常識に縛られない思考が生み出したものとみられている。
第一原理思考には、別の面での効果も指摘されている。コスト削減である。打ち上げ費用の大幅な削減は、一般的な企業改革の範疇では実現不可能だった。だが、「ロケット開発に必要な本質的要素は何か」という問い直しから、部品点数の削減や製造プロセスの簡素化といった根本的な改革が進められたと関係者は説明している。
もっとも、この思考方法が常に成功をもたらすわけではない。失敗も少なくないと報じられている。だが、マスクはこれらの失敗を学習機会と捉え、改善に生かす姿勢を徹底してきたとみられている。試行錯誤のサイクルを高速化することで、むしろ成功の確度を高めてきたと指摘する専門家も多い。
今後、スペースXが掲げる火星有人着陸やスターリンク網の完成に向けて、この第一原理思考がどこまで通用するかが試される段階に入るとみられている。宇宙産業全体の競争が激化する中で、マスクの思考方法が業界標準として定着するかどうかが、今後の注目点となるだろう。