オープンAIのサム・アルトマンCEOは2026年5月12日、イーロン・マスク氏が提起した公益目的違反訴訟に対して、同社が非営利の公益目的から逸脱していないと全面的に否定する見解を示した。マスク氏は昨年、オープンAIが営利化路線を強めていることが設立時の理念に反していると主張して法的措置を講じていた。アルトマンCEOは公開の場で「私たちは依然として人類のための安全なAI開発という初心を貫いている」と述べ、マスク氏の指摘を強く反論している。
アルトマンCEOは記者会見で、オープンAIの経営体制について詳しく説明した。同社は2023年に営利子会社の設立を発表したが、親会社である非営利組織は依然として最終的な意思決定権を保有していると強調した。また、同社の利益配分スキームについても「得られた収益の大部分は研究開発と安全対策に充当されており、株主への還元は限定的である」と指摘。具体的には、過去2年間のオープンAIの支出の75パーセント以上がAIの安全性研究と倫理的な運用体制の構築に費やされていると報じられている。
さらにアルトマンCEOは、マスク氏が当初オープンAIの取締役会に参加していた時点での経営判断と現在の状況を区別する必要があると述べた。「イーロン氏は2018年に取締役会を離れたが、その後のAI産業の急速な変化を考慮すると、当時の想定では足りなくなった部分がある」とのコメントが報道されている。訴訟の詳細な法的主張については、現在係争中であるため、両者の弁護団が法廷での集中審理に備えているとみられている。
マスク氏とオープンAIの対立は、AI業界全体に大きな波紋を広げている。この裁判は単なる両者の利権争いではなく、AIの開発目的そのものの定義を問い直す意味を持つと考えられる。営利化によるAI開発の加速と、公益性に基づいた安全重視のアプローチという二つのビジョンが衝突しているからだ。このため、業界内の他企業も注視しており、判決の行方によってはAI企業の営利化戦略そのものが法的に制約される可能性がある。マスク氏自身が率いるxAIは営利企業として明確に位置づけられているが、同社のAI開発理念がこの裁判によって影響を受ける可能性は低いとみられる。一方、日本国内でオープンAIのサービスを展開している企業や研究機関も、法的環境の変化に対応する準備が必要になるかもしれない。
マスク氏の第一原理思考で分析すると、この対立の本質は「AIという技術の支配権をめぐる思想戦」にあると考えられる。マスク氏は過去、AIが人類に与えるリスクについて警告してきた一方で、テスラやxAIでは急速なAI実装を進めている。この一見矛盾した姿勢の背景には、「AIの安全性を確保できるのは自分たちのような企業である」という信念があるとみられる。オープンAIがマスク氏の視点から公益性を放棄していると映るのは、オープンAIがマスク氏の支配下にない形でAIの発展を主導しようとしていることへの根本的な反発かもしれない。人類の多惑星化という長期的ビジョンの実現には、高度なAI技術が不可欠であり、その開発権の帰属をめぐる争奪戦の文脈で捉えることもできる。
裁判の進展は少なくとも数ヶ月は続くとみられており、その間にAI業界全体のビジネスモデルに対する法的スタンスが変わる可能性がある。
