イーロン・マスク氏が設立した脳インターフェース企業Neuralinkは2026年5月8日、完全自律型手術ロボット「R1」の第2世代モデルを公開し、同日より健常者を対象とした臨床試験(フェーズ2)を開始すると発表した。マスク氏はX上に動画を投稿し「人類の認知能力を拡張する最初の本格的なステップ」とコメントした。
R1は高精度カメラと機械学習モデルを組み合わせ、頭蓋骨に直径約2mmの小孔を開けてBrainチップ(N1インプラント)を脳表面に留置する。全行程を10〜12分で完了でき、局所麻酔のみで日帰り手術が可能だという。Neuralinkが公開したデータによると、現行の第1世代では24人の患者が手術を受け、うち22人が長期的に問題なくデバイスを使用しているとされる。
第1フェーズの臨床試験では、四肢麻痺患者がBrainチップを介してパソコンやスマートフォンを思考のみで操作することに成功した事例が報告されている。今回のフェーズ2では健常者に対象を拡大し、記憶強化や高速テキスト入力などの認知拡張機能の検証に焦点が当てられる。
神経倫理学の専門家からは慎重な見方も示されている。カリフォルニア大学バークレー校の研究者は「侵襲的な手術を健常者に行うことの倫理的・社会的影響は慎重に検討すべきだ」と指摘する。個人の思考データがどう扱われるかについても、プライバシー規制の観点から議論が高まっている。
Neuralinkは2027年末までに1000件以上の手術を実施する計画を明らかにしており、将来的には視覚回復や感覚フィードバックなど医療応用の幅を広げる方針だ。競合するSynchron社やMedtronicとの差別化において、手術ロボットの自律性と小型化が最大の強みになるとみられている。